GOOD MORNINIG!

                   HAPPENING 4
               








「本当に一人で大丈夫ですか?」
始めに自分が言ったとはいえ、やっはりこの状況で高耶一人を家に送り返すのは心配だ。
そんな直江の気持ちが、分かってんのかいないのか、高耶は自分チの門の前で、カラカラ笑う。

「平ー気だって、オレだってもうガキじゃねーんだから、父さんにちゃんと話すから」
十分”ガキ”ですよ、って言おうとした直江は、でもある事実を思い出し、高耶の意見に同意を示した。

「そーですね、オトナ、ですよね・・・・・」
クスクス意味有り気にジッと運転席から見上げてくる直江に、高耶は言ってる意味を理解して頬を少し紅くする

「直江は言うと、な〜んかHくさいんだよな〜」
口では文句っぽいコト言ってるくせに、顔は嬉し恥ずかし、を隠せない。
「Hくさいの、嫌い?」
完全に面白がってる直江に、高耶はチョビット唇を尖らしたけど、直ぐ不適な笑みでオッサンを見返した。

「大好き」

ニヤッって、笑った高耶の台詞に、直江は一瞬目を見開いたけど、やっぱしコッチも負けずに不敵な笑みだ。
「マジ?」
「マジ、とか言うなよー」

男にあんまし似合うとか思えない言葉に、高耶はケタケタ笑っちゃう。
「でも、マジ」
そう言うと、直江がキスし易い様に腰を屈めて顔を近付けて目を閉じる。

勿論、その願いは、直ぐに叶えられたのは、言うまでも、ナイ。












                       ***












「ただいま〜・・・・・・・」
直江に、ああは言ったけど、今朝んな風に家を飛び出したんだから、当然声は小さくなる。

現在の時間、9時3分前。

「あら、お帰り」
ドアの前で顔を合わせた母は、今朝のコトを気にするもも無く、ノー天気に迎えてくれた。
「・・・・・うん、ただいま・・・・あのさ、父さん、いる?」
いるに決まってんのに、わざわざ確認しちゃうのは、不安な心の表れだ。
そんな高耶の気持ちなんか、分かってナイらしい母親は、これまたノー天気に答える。

「いるわよ、リビングでTV見てる」
「・・・・・・」
分かってたけど、な高耶は、それでもチョビット”もう寝てたらイイかな〜”とか甘いコト考えてたんで、自然に眉根を寄せていた。

「・・・・・あ、そ・・・・」

そんでも、何時までも玄関にいる訳にはいかない。
ノロノロ以前直江にもらった(勿論、父には内緒)ナイキを脱いで、ヤツ(?)が待ち構えているだろうリビングへ向かう。その心境は、ドナドナな子牛だった・・・・・・・




「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

入り口に突っ立ったまんまな高耶を、無言で見る。
コッチもソファーに座ってんのを、無言で、見る、が自然と睨んじゃってんのに、高耶は気付いて無い。

それでもやっぱし年の功なオヤジの粘り勝ち(?)なのか、先に焦れて口を開いたのは、高耶だった。

「・・・・・オレ、直江に会ってた・・・・・」
と、いきなし直球。
「・・・・・・・・」
オヤジの眉、ピクッって、上がる。

「これからも、会うかんな」
「・・・・・・そんな事、許すと思ってんのか?」
全くにべも無い父親の言い草に始めの決心(オトナな話し合い)は何処へやら、、高耶は早くもキレ始めた。

「許さなくっても、んなコト知るかっ!オレが会いたいから会うっ!!!」

自然と声がデカくなる自分の息子を、無言で見てたけど、前触れも無くオヤジはスッと、立ち上がった。

「何、だよっ?!!」
「これから隣に行く」
「!」
「父さんが、ハッキリ言ってやる、二度とお前に近付くな、って」
「なっ?!!!」

余りのショックと理不尽に、高耶は言葉も忘れ、暫し立ち尽くした。
が、父親が自分の脇を通り過ぎた瞬間我に返る。
「ふっ!ふざけんなっ!!!何だよそれっ!!・・・・・・オレ・・・・・オレそんなの絶対っ!ヤだかんなっ!!」

「高耶っ!!」
どーしても分からない息子に、父の声も段々デカくなってく。
「ヤだったら、ヤだっ!!!」
「ダメと言ったら、ダメだっ!!」

どんどん収拾つかない事態にハマってく。
「何だよっ!直江のコト何にも知らないくせにぃ!!」
「知らなくていいっ!!」
「〜〜〜〜クソオヤジィ!!!」
「高耶っ!!」

「いい加減に、しなさい」

それまで、一切口を出さないで傍観者に徹してた母が初めて喋ったのは、お互いオーバーヒートしちゃって、もーどー仕様もなくなった時だった。

「お父さん、あたしは賛成だわ」
『?』

いきなしの発言に、高耶達は、争いを暫し忘れてボーッと発言者を見る。
お互い、結構マヌケな顔しちゃってんのには、勿論気付かない。

「お隣の信綱君さん、良い人よ」
『えっ?!!』

そんでもって、お互いに彼女の言ってる事を理解すると、見る見るその表情は対照的になってった。
「そうっ!直江、スッゲーイイヤツなんだッ!オレ大好きっ!!」
高耶、結構どさくさ紛れてる。
「なっ、母さんっ!何言って・・・・っ!!」

興奮オトコ二人にも、母さん涼しい顔。

「自分だって、本当はそー思ってるクセに」
「っ!!」

思わぬ発言に、父親は顔を真っ赤にしてる。
正に、図星指された、ってカンジだ。

「ちっ・・・・・・」
違う、って続けたかったらしいが、その台詞は途中でピタッって止まった。
何故なら玄関でベルが鳴ったからだった。

何とな〜く、マヌケな間が開いて、高耶は頭ポリポリ掻きながら、玄関に向かったのだった。

「・・・・ハイ?」
インターホンに向かって、相手の正体を確かめた高耶は、次の瞬間メチャメチャビックリしてしまった。
だって・・・・・
「高耶、さん・・・・?」
「なほへ〜〜っ?!!!」
その声の主は、今現在焦点になってる本人、その人だったから。








「・・・・・今晩は・・・・・・」
お世辞にも、友好的なんて言えない空気の中、直江は針のムシロ、な気分だった。

あれから高耶を一人で帰したのはいいが、どーにも気になって気になって仕様が無く、最初の決心は何処行ったのか、我慢出来ずに仰木宅に押しかけてしまったのだ。

リビングに通されたのは良かったが、直江が座ってる正面に、高耶パパが腕を組んで又を開き、デーンって座って、眉根を寄せて目を閉じていたりする。

”直江っ!何で来たんだよ!”
”あなたが心配で・・・・”
”・・・・・・それは嬉しいんだけどさ・・・・・ヤバくない?”
”ヤバそーですね・・・・・”

目を閉じてるフリして、実は薄目を開けて二人の様子を観察してた高耶パパは、そんな光景に、こめかみの辺りがピクピクしてたりしちゃってた。

「君・・・・・」
「はっ、はいィ!!」
いきなし呼ばれた直江は、もう、メチャメチャ、カチンコチン状態になってる。
「君は、一体どーゆーつもりで高耶に付きまとっているんだ?」

「ちょっ?!!付きまとってるって、何だよっ!!直江じゃねーよ、オレが直江に付きまとってんだよっ!!」
「高耶、お前は黙ってなさい」
「ヤダねっ!直江に酷い事言うんだったら・・・・・・」

直江を侮辱する様な言い方されて、高耶の頭は、あっとゆー間に血が上った。
しかし、事もあろうに、それを遮ったのは、直江本人だった。
父親に怒鳴ってる途中で、いきなし目の前に現れて、視界を遮ったのは、直江のデカい手だった。
「直江っ?!!」
「高耶さんは、黙っていて下さい」
「なっ?!!!」

直江の台詞に、驚きで目を見開いた高耶の前には、最初のカチコチなのが嘘みたいに、落ち着いた恋人の姿が、あった。

「・・・・・なお・・・・・え・・・・・」

高耶の独り言みたいな声に、直江は安心させる様に、ニッコリ笑った、何時のも優しい目で。

「仰木さん(本当は、お父さん、って言いたかったらしい)貴方の言いたい事は、良く分かります。私も小さい頃から同じ事をずっと聞かされて育ちましたから・・・・・・・・では、お聞きしたいのですが、貴方は、高耶さんをロクでもないヤツ、だと思いますか?」

パパを煽る様な言葉に、父親だけじゃなく、高耶もビックリしてしまう。直江は何を言いたいんだろう。

「貴様っ!高耶を侮辱する気かっ?!!」
「まさか」
激昂するオッサンを前に、直江は涼しい顔を崩さない。
「私は、高耶を素晴らしい人だと思います。優しくて純粋で、人の痛みの分かる・・尊敬に値する人だと」
「・・・・・・・・」
それはチョーット褒め過ぎじゃん?って思ってんのか、いないのか、パパは黙り込んじゃってる。
「そんな素晴らしい人と、隣同士になれた、これは私にとって奇跡にも似た幸運な偶然なんです・・・・・・」

直江は、そこで一旦言葉を切った。
そんな直江の隣に座ってる高耶の方はと言うと、褒め殺し、って言葉が頭ン中に乱立しまくり状態だ。
恥ずかしいやら、嬉しいやら、でもチョビット腹立たしくって、複雑、これに極まり、だった。

「どうか、どうかお願いします、昔の何の意味の無い風習で、この幸せを奪わないで下さいっ!!」
「・・・・・・・・・」

直江は痛い程真剣だ。
高耶パパだって、そんな事分かってる、でも、これは理屈じゃナイのだ。

「・・・・・君の言いたい事は、良く分かった・・・・・・・・」
冷静に、重々しく言う父親に、高耶は”この手ごたえならっ!!”って思い、心ン中に、希望の光が差し込んで来た。

「君が高耶を大事に思ってくれてるのも、君自身が悪い人間では無い事も・・・・・・・・・・しかし・・・」

ゴックン、息を呑む、高耶アーンド、直江。

「認める訳には・・・・・・イカン」

キッパリ

「・・・・・・・・はぁ?」

ココまで来て、それは無いんじゃない?ってなワケで、怒るより先に、高耶は先ずコケてしまった。
でも、やっぱしすぐ怒る。

「〜〜〜〜っ!!何でだよ!直江のコト、認めたんじゃなかったのかよっ!!!」
「彼自身、は認めるが、お前との交流については、また別問題だ」

「っ〜〜っ!!こンの、クソオヤジッ!!!」
「クソオヤジとは何だっ!!」
「クソオヤジだから、クソオヤジなんだよッ!!!」
「高耶ッ!!」

再び始まってしまった、オヤコ戦争。

延々このまま堂々巡り、かと思われた、その時、




「あなた、いい加減にしなさい」




凛とした、力強い声が、リビングに静かに光臨したのだった・・・・・・・








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                                                      2000.10.21

                  コレって・・・・・ホームコメディ?







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