お后さま VS 誕生日




「そうだ」
「……」
「む」
 横で上がった声に、千秋は途端にイヤ〜な顔になる。それを見てお后さまは唇を尖らせた。この男に、そんな風に『イヤ〜な顔』をされる謂れなどない。だから自然と声は尖る。
「何だその顔」
「この顔〜?男前の顔」
「……」
 ヘラリと笑う男だが、確かに男前である事実は認めざる得ない。顔と中身が比例しないとはこの事だ、世の中間違っている。
「じゃあ俺はこれで」
 ここは皇帝一家の食堂で、こじんまりとした空間だ。小さなテーブルに陣取りこれまでカードで遊んでいたと言うのに(賭けていた)唐突に立ち上がった皇帝直属軍の将軍に、高耶はキリリを眉を引き上げた。
「おい」
「……」
「おいって千秋」
「聞こえなーい」
「聞こえてんじゃねえかッ!」
 しょうもないつっこみにだが、実は心の広い将軍さまは付き合ってあげるのだ。その理由を上げると、賭けでは千秋が負けていた、と言う事が上げられる。だがどうやら、勝っている筈の高耶はそれどころではない様子である。これは都合がいいと、千秋は内心ほくそ笑んでいた。
「ふう」
 仕方ねえ……腰を椅子に戻すと、ズイ、と顔を突き付けた。
「うお」
 突然迫ってきた顔に、高耶は思わず仰け反ってしまう。いくら男前でも、男は男だ、間近で見たい顔でもない。だが千秋が女であれば……それはそれで気持ちが悪いので、高耶はそこで想像を中止した。
「で?」
「へ?」
「何が?って訊いて欲しいんだろ?」 
「別に」
 ふんッ
 偉そうにニヤニヤ笑う千秋の様子が面白くない。だから高耶は心にもない事を言ってしまった。これは高耶がへそ曲りな所為ではない、千秋の言動に問題があるのだ。だがこの意見について、高耶は周りの同意を得られないだろう。
「あそ」
 だが再び腰を上げた千秋に、高耶は直ぐに正直になってしまうのだ。
「あ嘘!話してやらない事もないから!」
 言っている台詞はともかく、素直になってみたらしい。
「……お前って面倒くさいよね」
 呆れつつも、千秋は腰を下ろした。どうやら聞いてくれるようだ。それもこれも、自分に魅力が満載だからであろう、そう高耶は結論付ける。
「よし、オレ様の話をよーく聞きやがれ」
「……」
「知っての通り、オレの誕生日はもう直ぐだ」
「知らねえよ」
「それでだ」
「……」
 綺麗にスルーされ、千秋は半目になった。当然高耶はそれもスルーする。
「もうそれ、止めたいな、って」
「はあ?」
 お后さまであり導く者≠ナある皇妃様は、聖なる存在である。その生誕祭となれば、帝国エチゴは国を挙げのお祭りに突入するのだ。それは毎年の事であり、国の行事となっている。美味しい屋台も立つのだが、食べに行けない高耶にとっては恨めしい限りである。
「だってオレ、もう40過ぎのオッサンだぜ?」
 どころか50も近い。戦国時代であれば、終末期と言っても過言ではない。自分で言ってて哀しいが、これが現実だ、例え見た目は10代しか見えなくとも。
 見た目……これが現在一番の問題であるのだが、高耶自身ではどうしようもなかった。あの謎のムカつく男、高坂に訊いてみたいのだがそれには難がある。
 何しろ直江ときたら、高坂が嫌いで嫌いで……どれ位嫌いであるかと言う、姿を見た瞬間切り殺してしまう程には嫌いであった。しかも直江は有言実行型の人間で、やると言ったらやってしまう。
 はっきり言って、高耶だって高坂は嫌いだ。これまで面倒くさい事態に悉く巻き込んでくれたのだ、鼻にメンタムを塗ってやりたい位嫌いであった。だが殺してやりたい……とまでは思わない。やはりこれは、心の広さの問題だろう。自分と直江とは違うのだ。
「おいクソ皇妃さまよお」
「……」
 クソは余計である。
「お前それ、本気で言ってねぇよな?まさかな?だって国政を司る立場のクソ皇妃さまがよ?そんな私情で国民の楽しみ奪うとかよお、まさかのクソ皇妃さまでも言わねぇよなあ」
「……」
 クソを連呼された皇妃さまは、それこそクソを食ったような顔になる。
「……でもさあ」
 この際クソは置いておくとして、高耶は心持甘えるように言ってみた。だがそれは、千秋の半目を更に酷くしただけであった。残念だが、これは直江と義明にしか効かない技らしい。
「でもさあ、って40過ぎのおっさんが言っていい台詞とは思えないぞ俺は」
「いーんだよ、人間見た目が全てだ」
「はん」
 開き直ってみると、千秋は馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
 鼻を鳴らすなど、何と下品な男だろう。この際教会の成田老の所に、教育的指導としてブチ込むべきではないだろうか。心の中でボヤくお后さまだが、自分も鼻を鳴らした事がこれまで数百回程ある事実を失念していた。
 そう言えば、成田の所に最近遊びに行っていない。そろそろ奴の淹れた美味しいお茶が飲みたくなってきた。
「……」
「おい」
「へ?」
「……お前今、全然関係ねぇ事考えてただろ」
 千秋の低い声ににっこり微笑むと、何事も無かったように高耶は続けるのだ。
「でな?子供でもねぇし、オレもさあ、こっ恥ずかしいんだよ、お誕生日おめでとお!ってさ。オレだった皆の楽しみ奪う気なんかねえ。だからオレの誕生日じゃなくって、違う名前つけてお祝いの日、ってすればいいんじゃねぇかなあ、と」
 実は高耶は、そんな事考えていなかった。ただ恥ずかしいお祝いを止めよう、と思っただけだ。だが千秋の『国民の楽しみ』を聞き、喋りながら咄嗟に代案を口にしてみたのである。もしもただ、お祝い止め!などと言えば、この先当分『クソ』を枕詞にされてしまうと、お后さまでも容易に想像出来てしまう。
「ふーん……まあ、お前の気持ちも分からないでもなくもないけど、無理はもんは無理だ」
「ないでもなくもない……うん?」
 それって、気持ちはさっぱり分からない、と言う事か?だが高耶が首を捻っている間にも、将軍の話は進んでいく。
「これはお前の誕生日、ってのが大事なんだよ。いくら祝日であってもそれが違う名前に変わるのは、あの男が認めると思うか?」
「……直江は関係ねぇよ」
 直江、の言葉に途端に高耶の顔が、渋い柿のパイを食べされられたような顔になった。渋過ぎて、今にも吐き出しそうである。だが正確には、直江、の名前を上げたのは千秋ではなく高耶自身である。
「お?」
 それを見逃す男ではない、目敏いのだ、千秋と言う男は。にやり、正にそんな音が聞こえてくるような顔になった。高耶にとってそれは、不幸以外の何ものでもなかった。
「……だよ」
「むふ〜ん」
「……」
 警戒にぴりぴりする高耶を前に、千秋は酷く愉しそうだ。それを見て高耶は、自分の考えを再認識するのだ。
 こいつは本当に悪党で、人の皮を被った千秋なのだ。人の皮を被った千秋……それは高耶自身にも、よく意味が分からなかった。とにかく『悪』だと主張したい。
「何があった?この将軍さまがお力になりましょうぞ?」
「……」
「なあ、本当に俺に話した方が得策だぞ?」
 にやにや
「……」
 普段の千秋ならば、こんな場合一番に逃げる。国王夫妻のアホとしか思えないゴタゴタに巻き込まれたくないからだ。それなのにこの態度は一体何だ?高耶はぐるぐる訝しんだ。何か理由がある筈だ。
 高耶の考えは当たっていて、実際大きな理由があった。暇である、そして暇であって暇であったからだ。
 皇帝程ではないが、皇帝の従兄弟でもある将軍さまは基本多忙である。だが年に数回、ヒマー!と叫びたくなるような時期があるった。そしてそれを千秋は、現在満喫中なのだ。
「……よし、言おう」
「言え言え」
 そして高耶はもそもそと、鳴きねずみのように話し始めたのである。










 朝とは眠いのもで、それはあっちの世界でもこっちの世界でも、老若男女変わらない。だたそれには大小あり、大もあれは小もあって、そして特大も存在するのである。
「……」
「高耶さん」
「……ぃ」
「高耶さん」
 初めの内はそっと優しく、だが直ぐにそれは大きな揺さ振りとなり、果てには首がげる勢いで揺らされる羽目となるのだ。流石に寝汚さにかけては他の追随を赦さない高耶であっても、たまらず起きてしまう。森野の『蹴り出し』に匹敵する威力があった。
「……ひどい」
「何がです」
「このオレにこの仕打ち」
 このオレなのに……
 ぼやぼやの頭でも、文句を言うのは忘れない。
 初めの内、腐っても伴侶である高耶を直江は、それはそれは優しく揺り籠のように揺さぶっていた。だがそれは、愛故ではないと高耶は踏んでる。では何故か、言い訳、の為である。
 何ですか高耶さん、俺は初めの内はゆっくり優しく起こしましたよ?それでも中々起きてくれないので仕方なく、痛む心を押さえて揺さ振ったのではないですか……そう、言い訳する為なのだ。全く、悪知恵だけは働く男だ。この知恵を、オレへの敬いに向ければいいものを……ぶつぶつボヤく高耶の言葉は完全に無視される。
「高耶さん」
「あんだよ」
「もう直ぐですね」
「……」
 何が?とは訊かない。本当は何が?何がもう直ぐ?ととぼけたい所であるが、そうもいかなかった。
「……うんまあ」
 何とも歯切れの悪い高耶に構わず、直江は朝っぱらから上機嫌である。恐怖王の異名を持ち、近隣諸国から恐れられている男とは到底思えない。
「何が欲しいですか?」
「……」
「高耶さんは何が欲しいですか?」
「……」
 しつこい……
 これは、10年続いてきた行事となっている。
 高耶の誕生日が近づくと、こうして直江はご機嫌で、何が欲しいのか、とせっついてくるのだ。
 正直、欲しいものはたくさんあり、そして何もない。
 強いて言えば平穏な生活&帝国エチゴの平和、それに尽きた。
 これは、高耶が健気で心清く、慈悲溢れる施政者であるからでは、決してない。シンプルに、喉から出が出る程欲しかったからだ。そんな心の叫びは、この10年いかにトラブルに巻き込まれてきたかをよく表していた。
「高耶さん」
「……」
 だが、これを言って、どうなるものでもない。だから高耶は言いたくないのだ。
「別に」
「別に?」
「無い」
「本当に?」
「うん」
「……」
「……」
 見る見る、直江の表情が変わってきた。
 普通の笑顔で、一見何も変わっていないのだが、その変化が高耶には分かるのだ。普通の笑顔が、徐々に『張り付けた笑み』になった、そんな所である。
「……じゃあ考えとく」
 高耶の言葉に、一応は妥協し直江はベッドから降りた。その背中を高耶は、陰鬱な気持ちで見送ったのだった。









「はーッ」
 大声で息を吐き出した千秋に、高耶はギョッと目を丸くした。
「おいッ」
 自分の話は、決してこんな風に、はーッ、と鬱陶しげに息を吐くものではない。だと言うのにこの男は、呆れた目で睨んでくるのだ。この扱いに、高耶は目の前のお茶を頭からぶっ掛けたい欲望に駆られた。だがこのお茶はまだ熱く、頭から被れば火傷をしてしまうかもしれない。そんな理由で踏み止まる自分の心の広さに高耶は感動した。
「お前が話せって言ったんだろ?なあ、直江に何て答えればいいと思う?」
「……」
 結構必死なお后さまに、千秋は半目を通り越し目を閉じそうな勢いだ。だが千秋の反応は、至極真っ当と言えよう。今の話を聞いて、もろもろ色々がよーく分かってしまったのだから。
 初めにこの皇妃がほざいた、おっさんだから恥ずかしい、と言うのはオマケのオマケの理由であって、本編はそう、相棒である皇帝、直江との意味不明な遣り取りであったのだ。
「……つまり……欲しくもないものをしつこく訊かれ、だったら生誕の祭りごと失くしちまえば直江の気が逸れる、と」
「そうなのか?」
「……俺に訊くなよ……」
 やる時はやる皇妃を、千秋は千秋なりに買っている、絶対本人には言ってあげたりしないけど。だが、問題は『やらない時』だった。そう、こんな風に、阿呆に阿呆の輪をかけたような阿呆さに、頭を抱えさせられる時など、それを実感してしまう。
「なあ、どうするか千秋お前考えて」
「……」
 シレっとと言うその笑顔に、ぶん殴ってもいいと千秋は思った。だがそれさえも疲れてしまい、千秋は黙ってお茶を飲む。もしここに綾子がいれば、間違いなく血の雨が降ったであろう。オマケに成田老もいたとしたら、血で血を洗う抗争に発展したかもしれない。何と言っても綾子とあの聖者様、成田老の犬猿さはシャレにらないからだ。
「はあ」
 つくづく千秋は、自分の温厚さを誇りに思うのである。
「……ならさあ」
「うん?」
 身を乗り出す皇妃の目は、キラキラと輝いていた。それを見て千秋は、心底うんざりしてしまう。だが、話してみろ、と言ってしまった手前、何とかしてやらねば、と思ってしまう千秋は高耶のカモであった。
「離宮にでも行けば?」
「……」
 折角答えてやったと言うのに、返ってきたのは高耶の冷たい目だった。
「えーつまんねえ答え」
「……」
「離宮じゃさあ、何か芸が無いんだよな、ゲイが」
「……」
 馬鹿にしたように嗤う皇妃に殺意が芽生えたとしても、千秋に一切の罪は無い。
「じゃあ……」
 だが千秋は辛抱強かった。生まれた時からイカれた俺様な従兄弟、直江に付き合わされてきたスキルは伊達ではない。こんなクソガキに、本気になるなど沽券に関わってしまうのだ。
「じゃあさあ、今回特別あの何とかして、あの薬とか飲んでさあ、祭りん時城下で肉でも食えば?」
 投槍に答えてみる。
 知るか!的な発言であったが意外や意外、それは高耶の興味を甚く引いてしまったようだ。
「肉?」
「……」 
 それを見逃す千秋ではない。ここは畳み掛け!とばかりににっこりと営業スマイルを浮かべてみる。
 笑顔、それはプライスレス。
 このアホくさい状況から解放されるのであれば、スマイルでも何でもくれてやろうではないか。
「そうだよ、少しだけでいいから、お前と2人で城下をぶらぶら歩きたい、誕生日のプレゼントはそれがいい、それだけでいい、とか何とか……おい?」
 ガタンッ
 大きな音に目を見張ると、既に高耶はおらず、倒れた椅子だけが転がっている。
「……」
 だから千秋はそっと小さな声で、高耶が消えたであろう方向へ呟くのだ、
「どーいたしましてー」
 まるで屍のような顔で。









 バタンッ
「直江ッ!」
「高耶様、ノックをお忘れですよ?」
「高耶さん?」
 執務室に飛び込んできた后を、直江は驚きつつ笑顔で迎える。八海の苦い表情は、2人の目に入っていなかった。
「決めたぞ!」
 笑顔で拳を振り上げる皇妃は、絶対に何かを勘違いしている。だがこの場に、それを指摘してくれる者はいなかった。だから高耶は思うままに拳をがんがん突き上げた、それはそれは得意そうな顔で。
「決めたー!」
「決めた?……ああ、はいはい」
 直ぐに思い至った直江の笑みは、一気に深くなる。それを見て八海は、仕方なくお小言を飲み込んだ。ノックをしてくれ、と何度言っても延々直らない鳥頭であったとしても、この皇帝にとって人間的な感情と表情を齎すのは皇妃だけなのだから……苦労人宰相の陰ながらの努力である。
「で?何がいいですか?」
「ああ、高耶様のお祝いですね?この八海めは……」
「ああいいよ、いらない」」
 あはは!
「……」
 言い終わる前のシャットアウトの言葉は、高耶の笑顔付きであった。哀れ老宰相は、仕方なく口を噤む。この所業、人でなしと言っても過言ではない。
「そうで、ございましたね……」
 長年に渡りこの皇妃には、本当によくしてもらっている。だから何か贈り物をしたかったのだが仕方がない。そもそもここ数年皇妃は、生誕のお祝いの受け取りの一切を断るようにしていた。それは国発表として、扱われている。
 それ以前はこの時期、毎年国内外からの贈り物で王城の部屋のいくつもが、いっぱいになってしまっていた。それにうんざりし、そして申し訳なく思い皇妃は断行したのである。
 オレにそんなもん買うんだったら、自分ちの家族とかに買ってやれよ、って言うか贈り物って何でこう、センスねぇの?との言葉は誰からも聞こえない振りをされた。オレはただ、無駄が嫌いなだけなのに……そう言ってしくしく泣き真似をした高耶の後頭部には、綾子のヒールが減り込んだと言う。
「それでな?直江……」
 こうして高耶は、千秋の言ったそのまんま、一文字も違えずまんま!を皇帝に告げてみた。そして結果と言えば、
「……まあ、そうですねえ、本当は許可出来ないのですが、誕生日ですし……それに何でも、と言ったのは俺ですからね」
 珍しく恰好を崩し、分かり易く上機嫌な様子の皇帝に、傍で眺めていた宰相はほうほう、と驚きつつ微笑んでいた。それはまるで、おじいちゃんが出来の悪い子程可愛い、可愛くて仕方がない、そんな目である。
 実際八海は嬉しかった。まるで、陛下が普通の人間みたいではないか!そんな感動に打ち震える。この感想が不敬にならない皇帝なので、まあいいのだ。
「……」
 出来の良い宰相は、こっそり執務室を後にした。残ったのは、皇帝夫妻である。
「なあ」
 机を回り直江の膝の上に高耶はどっかり腰を下ろした。
「嬉しいか?」
 嬉しいだろう、このオレと市場デートが出来るのだ、嬉しくないなんて変だ。だがそもそも直江は変なので、高耶は不安になり顔を覗き込む。変な直江は、嬉しがっていないのかもしれない。もしそうであれば、きっちり教育してやらねば。
「嬉しいだろ?」
 探るように見る高耶の唇に、触れるだけのキスを落とす。
「なるほど」
 にかッ
「何がなるほど、なんですか?」
「お前がいかに、オレの事が好きなのかよーく分かっている所だ」
「はあ」
「良かったな」
「何が、ですか?」
「お前は変だけど、まあまあ大丈夫って事だ」
 えっへん
「……それは良かった」
 半目になりそうな直江であるが、高耶が嬉しそうなので深く考えない事にする。
「あー誕生日楽しみだなー」
「そうですね」
 直江の膝の上でにこにこ顔の高耶を千秋が見れば、取りあえず首を絞めておくだろう。だが実際はいないので、高耶は命拾いした事になる。その自覚の無い皇妃は、かなりの長時間、皇帝の足が限界を迎えるまえで延々、膝の上で足をバタつかせていたのだった。








「皇帝陛下」シリーズの番外編と言うか……
本編はもっともっとシリアスです